今井翼君主演の『マリウス』も本日が千穐楽。マルセーユに本当にいそうな(柴又にいそうでもあるけど)人の好さそうな町の人(特にプティ)とそしてマリウスとも今日でお別れかと思うと寂しくもあります。千穐楽のあいさつも含めて最後の『マリウス』をレポートします。千穐楽なので、ラストの部分については盛大にネタバレしております。(念のため)
千穐楽の空気があるからこそ生まれる、役者の演技とお客さんの反応
グランドサークル階には山田洋次監督の姿が見えました。マリウスの最後の船出を見届けに来たのですね。
本日は、今日だけ特別、千穐楽ならではごちそうが並びました。
- 登場人物が出るたびに拍手がおこります。翼君、美織ちゃん、林家正蔵師匠だけでなく、しめちゃんが登場するところでも拍手が起こりました。
- セザール(柄本明さん)が酔っ払って、見える人が日本の忍者みたいにたくさんいるように見えるんだというくだり。ファニー(美織ちゃん)が手裏剣をなげる真似をしているところが、かわいい~
- パニスの旦那(正蔵師匠)がファニーに言い寄っているのを知って、やきもちを焼く、マリウス。注文したお酒をわざとこぼすのですが、千穐楽なので盛大にこぼしました。パニスがあまりの量に「ずいぶんとこぼしたな、おもらしみたいになっちゃったぞ」といって笑いとってます。
- その直後のマリウスとパニスがお互いの顔1cmくらいに近づけて罵倒し合う場面では、つばがかかりすぎて、最後には地面につばを吐くマリウス
- 千秋楽、朝帰りの翼は匍匐前進で裏に回っていました。完全犯罪目指してましたね
最後のマリウスに、今井翼君の衝動に「成長」を観る
前回のレポで、すでにあらすじとフラメンコの見どころについて書かせていただきましたこちら
この舞台は翼の外の世界への憧れ、そこに向かう衝動が一つの見どころです。
平凡な幸せを描くからこそマリウスの衝動がくっきりと浮かびあがる
その中で、二回めのフラメンコ『海への抑えきれない衝動を抱えたマリウス』の背景にいるのはプティ(七五三掛龍也君)とその恋人ニャです。マリウスは平穏すぎる毎日に焦りを感じているのですが、その背景にはつらい境遇の中にも肩を寄せ合って生きることに幸せを見出しているカップルがいます。その対比。冒頭の歌にもありますが、マルセーユの人たちは平凡な毎日を幸せに生きているけれど、マリウスはそれでは満足できなかった。平穏無事な毎日はそれだけで尊いけれど、海の向こうにあるなにかにひかれてしまう、マリウス。マリウスがもつ衝動を際立たせるのがプティ達の存在で、その尊さが欠かせないのです。
マリウスの衝動は1年半後にマルセーユに戻ってきた時にも爆発します。
お互い愛し合っているのに別れてしまったマリウスとファニー。パニスと結婚したのは自分に愛想をつかしたからだと思っていたマリウスですが、ファニーは今でもマリウスを愛していました。そしてファニーの子はマリウス自身の子であることもわかりました。マリウスの衝動が走ります。ファニーと子供を取り戻したいと強く願います。そこから、マリウスを取り巻いていた人々がマリウスの衝動を打ちのめします。
- 父セザールの「赤んぼの5キロを9キロにしたのは愛情だ。一番愛情をやったのはパニスだ、お前が欲しいのはファニーだろ」という叱責
- パニスの赤ちゃん対する愛情の深さ
- ファニー「神様も法律も許してはくれない」戻れないところまで、私たちはきているんだという気持ち
マリウスは愛するもの、居場所が失われていくことに打ちひしがれ、再び、海に戻ろうとします。
そこで!またファニーったら「パニスは私の気持ちを知っているから、結婚以来私の体にふれたことはないのよ」なんていうのです。
マリウスはすべてを飲み込んで、海に帰ろうというのに。
マリウスは再び、ファニーを連れ去ろうとします(そりゃそうなるよね)
この最後のマリウスの衝動に、人間の素晴らしさを感じます。そしてこの衝動をわれらが今井翼座長が、翼史上最強の形で爆発させます。
翼君の舞台を何度も観ていますが、今回のマリウス、この場面に翼君の今持っているすべてで、今までやってきたことの全てが込められていました。演技としてなのか、本人の爆発なのか、もはやわからなくなるような、でも翼君のこの衝動を観られてよかったと思えるような舞台でした。そしてその衝撃の後にまた一つ男として成長した顔にもグッとくるものがあります。ぜひまた再演していただきたい。松竹さんよろしくお願いいたします。
マリウス版“翼&タッキー”が千穐楽の挨拶をしました
千穐楽につき、出演者、そして脚本、演出を手掛けた山田洋次監督の挨拶がありました
翼:最後のあいさつでなにをいうか考えていませんでした。これほど目の覚めるような時間はありませんでした。山田監督、全ての出演者、スタッフのみなさんのおかげで、まさに大船に乗せていただき、果てぬ道を考えさせられる時間でした。ありがとうございます。
翼:いつも僕のパートナーはタッキーなんですが、、今回は違ったタッキーで
瀧本:どうも、、、タッキーです(会場拍手)
はっ!確かにタッキー&翼だ!
瀧本:本日はお足元の悪いなか、ご来場いただきましてありがとうございます。終わるのがさみしくて、私も最後の挨拶を考えていませんでした。出演者、スタッフの皆様ありがとうございます。ファニーとして生きられて幸せでした。
柄本:マリウスの航海も最後です。芝居は一人ではできません。出演者、スタッフ、そしてたくさん見に来てくださったお客様、ありがとうございました。感謝します。
綾田:ミュージカルということで一曲くらい歌いたかったですが(会場笑)風呂場で、でも歌うことにします。(歌の披露は)今度の楽しみにします。
正蔵:今回は色々粗相がありまして、何日めかに修羅場のシーンで翼さんくんのシャツを全開させてしまって、、間近で見てしまって、、抱かれたいな!と思いました
ここで山田洋次監督がベトナムの花売り娘ニャ(豊原江理佳さん―劇中しめちゃんの彼女)に伴われて登場。豊原さんが山田監督と出てきた時にしめちゃんが「えっ監督と出てくるの?」とびっくりした表情。
山田監督:本日は平日のお昼にも関わらずご来場いただいて、ありがとうございます。千穐楽というのはさびしいものです。(この舞台が出来上がるのは)すべての出演者のおかげです。
ここで作曲を担当した中島千絵さんとフラメンコ振り付けの佐藤浩希さんを紹介。佐藤さんを「翼君の先生です」と紹介する監督。しめちゃんはカーテンコールの最初から鼻を赤くして泣いていました(プティが泣いてるよ、かわいすぎるよ)
本日の独り言
客席に山田洋次監督を見つけた時に、「しめちゃん、最高にかわいくして、山田監督にアピールして」と願った七五三掛担は多いはず。映画出演狙いたいところです。山田監督いかがでしょうか?