ジャニーズJr.の肩書きが取れた、文ちゃんこと浜中文一君は忙しい。屋良君のドグファイ→ディスコティークの後に単独の出演となる『Take Me Out 2018』。2003年のアメリカメジャーリーグの選手たちを描くこの物語は今でもアメリカに存在しているゆがみを見事に描き切った作品になっています。骨太のストレートプレイ作品に出演した文ちゃんについてレポします。
『Take Me Out 2018』あらすじ
2003年、アメリカ。メジャーリーグエンパイアーズのロッカールーム。
チームメンバーは白人、白人とアフリカ系のハーフ、ヒスパニック系、そして日本人。チームがアメリカの縮図のように様々な人種がひしめきあっている。
白人の父と黒人の母との間に生まれたダレン・レミング(章平)は有色人種でありながら、偏見に苦しめられたことのない中産階級出身という稀有な存在であり、5ツールプレイヤーと呼ばれる理想的な花形選手であった。そんな彼が“ゲイ”であることを公表する。
人気者のダレンのカミングアウトに対しては様々な反応があった。彼の告白を支持するキッピー(味方良介)や少し腰が引けているジェイソン(小柳心)。あからさまにゲイへの嫌悪を表すトッディ(浜中文一)、語気荒くスペイン語でまくしたてるマルティネス(陣内将)とロドリゲス(吉田健悟)。日本人のカワバタ(堅山隼太)は口を開かない。
ロッカールームにかつてない緊張感が走っている頃、ダレンの発言はマイノリティを勇気づけてもいた。新しくダレンのビジネスマネージャーとなった会計士のメイソン(玉置玲央)もその一人だ。ゲイであるメイソンは野球を見たことがなかったが、ダレンとの出会いをきっかけに野球を見はじめ、社会のルールに通じるさまざまな発見をする。
カワバタの調子はあまりよくはなく、負けが続く。そこで抑えのシェーン(栗原類)が投入される。シェーンのおかげでチームは再び盛り返すが、ヒーローインタビューで「ホモ野郎とシャワーに入るのは耐えられない」と発言することで世間が騒がしくなる。
シェーンの騒ぎはシェーンがマイノリティに対する敬意を表明する手紙を読むことで復帰のめどが立った。シェーンに不信感をもつダレンはついに衝突する。それはシェーンに思いもよらない事態を引き起こさせる。
愛のない嫌悪を浴びせかけてなお、憎めない文ちゃんのステップアップした演技
強いアメリカを象徴するものの一つがメジャーリーグ。
だから、メジャーリーガーは“理想的な男らしさ”をもつ子供たちのヒーローなのですが、そのヒーロー達はどんどん多様化しています。古き良きアメリカで、特権を謳歌していた“男らしい”“白人”の選手は異質な存在(有色人種やLGBTなど)にとまどっています。
われらが文ちゃんは“白人”のメジャーリーガーを演じ、異質な存在に対して、“嫌悪”という行動をとります。「神がお前を裁く」とゲイを公表したダレンにいい放ち、チームが負け続ける理由はダレンだとメンバーにぶちまけます。実際こういう感情論がアメリカにあることは間違いありません。文ちゃん、こういう、小さな一市民をやらせると逃げ足の速さというか、軽さが活かされています。ドグファイもへたれな軍人の役でしたが、今回のトッディも軽やかに無責任です(褒めてるよ)
そして、今回、ドグファイを超えて、文ちゃんの他人を傷つける時の言葉の浴びせ方、注目です。言葉の暴力に躊躇がありません。暴力は特権と信じて疑わないものだけが浴びせかけられる冷たさがそこにあります。文ちゃんの演技力に磨きがかかっています
演出の藤田さんも
<浜中文一さん>
状況により価値観が揺らぐ“一市民”トッディという白人選手を愛おしく表現されているのが素晴らしいです。我々が一番自己投影できる人物かもしれません。
とパンフレットでコメントされていました。冷たさはあるけど、憎めないのが今回の文ちゃんです。
試合中にスタジアムに流れるTake Me Out to the Ball Gameは1908年に作曲され、100年以上の長きにわたってて今なおメジャーリーグで親しまれている愛唱歌。古き良きアメリカを象徴する曲だが、逆に考えれば、100年前は有色人種やLGBTはどんな扱いを受けていたのか?良き時代だったのは白人限定だったとも言えます。100年たった現在Take Me Out to the Ball Gamの流れる中、無表情でプレイする白人選手の意識は100年たっても全く変わってないことを象徴しています。ここの無表情文ちゃんがいかにもな白人です。
本日の独り言
- 文ちゃん含めチームメンバーのシャワーシーンがあります。文ちゃんの上裸見入ってしまいました。。。
- 今作品を翻訳している小川絵梨子さんが演出されるマクガワン・トリロジーにも文ちゃん出るってよ。相当期待していいんじゃないでしょうか。
- 栗原類君の狂気がずっとひっかかってます(←もちろん褒めてる)
作品データ
タイトル |
Take Me Out 2018 |
製作年 |
2018年 |
公演期間・会場 |
2018年3月30日(金)~5月1日(火) |
上演時間 |
約2時間 (休憩なし) |
演出 |
藤田俊太郎 |
脚本 |
リチャード・グリーンバーグ |
翻訳 |
小川絵梨子 |
出演 |
メイソン・マーゼック:玉置玲央 シェーン・アンギット:栗原類 トッディ・クーヴィッツ:浜中文一 キッピー・サンダーストーム:味方良介 ジェイソン・シェニファー:小柳心 マルティネス:陳内将 デイビー・バトル:Spi ダレン・レミング:章平 ロドリゲス:吉田健悟 タケシ・カワバタ:竪山隼太 スキッパ―:田中茂弘 |