NEWSコンが終わって、少し現場から離れていましたが、八乙女君と髙木君の舞台に行ってまいりました。16世紀末の偉大な脚本家二人を八乙女君、髙木君二人が演じます。今回もめちゃくちゃネタバレが含まれますので、まだご覧になってない方はお気をつけください。
『薔薇と白鳥』あらすじ
16世紀末、劇作家クリストファー・マーロウ(八乙女光)は贋金作りの話につっこみ、悪い筋の連中に追われていた。20ポンドを払わないと殺されてしまうが、飲み歩いては喧嘩を繰り返すマーロウにそんな余裕はない。娼婦の館に住むジョーン・ウッドワート(町田マリ―)のところに身を寄せているマーロウはここのところ、人気作を書けないでいた。
行き詰ったマーロウはローズ座の劇場主ヘンズロウ(佐藤 B作)から前借りをしようとするが、すでにマーロウに3本分の前借りをしているヘンズロウはいい返事をしてくれない。そこに、新人役者のウィリアム・シェイクスピア(髙木 雄也)がローズ座に現れる。彼は驚異的な記憶力の持ち主であっという間に何役ものセリフを覚えてしまい、新人ながら、一置かれる存在になっていた。
ローズ座のパトロン、ストレインジ卿は、このなんの実績もない、新人のシェイクスピアに新作を書かせようと試み、その監督にマーロウを指名した。報酬は20ポンド。のどから手が出るほど欲しい金のために、マーロウはシェイクスピアに作劇を指導していく。自分の脚本をシェイクスピアに読ませ、そこからシェイクスピアは盗んでいく。シェイクスピアは恐るべき勢いで吸収をしていった。
金に困っているマーロウは、ジョーンが止めるのも聞かず、カトリックの動きを探る諜報員のイングラム・フライザー(武田 真治)から金を借りる。条件はシェイクスピアの作品の内容教えることとシェイクスピアは何者なのかをさぐること。マーロウは承諾するよりほかなかった。
シェイクスピアが題材に選んだのは『ヘンリー6世』。歴史上二番目にダメな王様の物語だが、シェイクスピアは王ではなく、その臣下タルボットにスポットをあて、人気俳優エドワード・アレン(本折最強さとし)の見せ場をつくり、興奮するような作品に仕上げた。
『ヘンリー6世』の成功でシェイクスピアは大作家への道を歩み始めていた。三年の月日が流れ、シェイクスピアに触発されたマーロウも作品を書こうとしたしていたものの、人気作を生み出せずにいた。ローズ座を訪れたマーロウとシェイクスピア。二人に対する人々の対応は天と地ほどの差があった。しかしお互いへの気持ちを語りあり、ぶつけあううちに、二人の中では作劇をする同類、なによりも代えがたいライバルであることに気づく。お互いの気持ちが通い合っていった。
フライザーから依頼されたシェイクピアの調査をしていくマーロウは、驚くべき事実にたどり着く。追い詰められるシェイクピアを救えるのは誰か?
友達以上、恋人未満な八乙女君と髙木君
なんといっても今回の見どころは主役のお二人ですね。お二人の関係と言った方がいいかもしれません。破天荒なマーロウを演じる八乙女君とミステリアスなシェイクスピアを演じる髙木君。このバランスがぴったりときます。今回G2さん書下ろしの物語ということで、二人にあてられて書いていることがわかります。
特に今回驚いたのは髙木君の舞台での輝き方。すらっとした高身長の髙木君が舞台に立つと、いやが上にも視線は集中し、その上、あのイケボですよ。見て良し、聴いて良しの、舞台俳優としての逸材要素にあふれています。逆になんでいままで舞台に出ていなかったかが不思議なくらい。(Endless SHOCKはとりあえずおいといて)今後も髙木君、舞台出た方がいいよ(←誰だよ)髙木君は今回シェイクスピアを演じていますが、出来上がっちゃった天才ではなく、天才になる過程の青年期が描かれているのでミステリアスでクールな印象。
そこに絡んでくるのが熱い男マーロウこと八乙女光君。クリストファー・マーロウはシェイクピアよりも前に人気を博した作家さんだということですが、シェイクピアの威光の陰に隠れてしまって、どういう人物だったのかがあまりよく残ってない不遇の人。スパイだったり、同性愛者だったという噂が残っていて、今回の物語にもその噂が盛り込まれています。
二人の関係で特に注目は二幕。マーロウは必死に書いているのに鳴かず飛ばず。一方、シェイクスピアは作家として大成功を収め一幕で描かれた師弟の関係が全く逆転してしまった二人。その二人が自分の思いをぶつけ合うシーン。
もはや盗むものがなくなって、書けなくなったシェイクスピアはマーロウに太刀打ちできないと吐露します。そこに「自分がもてあます自分が、自分らしさだ」アドバイスするマーロウ。シェイクスピアを誰よりも評価していたのはマーロウ。だからこそシェイクスピアにはもっともっと作品を生み出して欲しい。製作の苦しみを知っている仲間として、いや、もはやその仲間感情を飛び越えた、特別な感情がマーロウからビンビン出ちゃっている状態で語ります。(ここら辺が同性愛者である事実と重なっていて、うまい演出)
仲間として仲間を超えた存在としてシェイクスピアを助けたい。そして自分も劇作家として、もう一花咲かせたい。ラストの驚くべき演出にはマーロウのシェイクスピアと作劇に対する思いがパンパンに詰まっています。八乙女マーロウの愛情あふれる語り口に聞きほれてください。
そんな仲良しのマーロウ、シェイクスピアの衣装も秀逸で『薔薇と白鳥』の名にふさわしく、マーロウは赤、シェイクスピアは白の衣装。頭のてっぺんから電流流されたようにかっこよくてしびれます。二人のキャラクターが衣装を通じて表現されています。
シェイクスピア推しのジャニーズ舞台
それにしても今年のジャニーズはシェイクスピアをかなり推しています。
『薔薇と白鳥』八乙女光、髙木雄也主演
「Only You(オンリー・ユー)~ぼくらのROMEO&JULIET~」増田貴久主演
『ナイツ・テイルー騎士物語ー』堂本光一主演
この夏から秋にかけて、シェイクスピア関連でも三本上演されます
今回のパンフレットを見ていても、G2さんはシェイクスピアをお題にもらっていたという話が書かれています。シェイクスピアをテーマにしていますが、あくまでG2さん書下ろし。コメディを得意とするG2さんだけあって、骨太の人間ドラマでありながら、きちんと笑いはとってくるところがさすがです。
本日の独り言
- マーロウが仕立てた最後のサプライズシーン。滝沢歌舞伎思い出したのは私だけでしょうか。
- 『ヘンリー6世!』っていう時のシェイクスピアがかわいすぎる
作品データ
タイトル |
『薔薇と白鳥』 |
製作年 |
2018年 |
公演期間・会場 |
東京グローブ座 (東京都) 5/27(日)~6/24(日) 森ノ宮ピロティホール (大阪府) 6/29(金)~7/1(日) |
上演時間 |
約2時間30分(休憩15分含む) |
作・演出 |
G2 |
出演 |
クリストファー・マーロウ:八乙女 光 ウィリアム・シェイクスピア:髙木 雄也 イングラム・フライザー:武田 真治 ジョーン・ウッドワート:町田 マリー エドワード・アレン:本折最強さとし ジャック・バッファロー:有川 マコト ケント・デリンジャー:林田 一高 若い母親/フードの女/女将:鹿野 真央 フィリップ・ヘンズロウ:佐藤 B作 |