少し遅れましたがふぉ~ゆ~主演舞台のレポを書かせていただきます。伝説的な劇団カクスコの舞台をふぉ~ゆ~が演じます。一部、ネタバレ含みますので、まだご覧になってない方はご注意ください。
『年中無休!』あらすじ
ここは北千住のリサイクルショップ朝日堂
のらりくらりと人生を生き抜いている与田(福田悠太)
美人を見るとテンションが上がる日置(越岡裕貴)
ふわっと大きなことを言う保坂(辰巳雄大)
底抜けに明るいバカの辻(松崎祐介)
ギターで人生を弾き語る店長(大高洋夫)
奥さんとラブラブな心優しき薄毛の先輩追手門さん(八十田勇一)
そんな6人の朝日堂でのとりとめのない日々がこの物語
給料が安くったって、給料が出ないかもしれなくったって、空に浮かぶ飛行船をみて仲間と想像する世界はなんだか刺激的。トラックが脱輪してびしょぬれになって、ぶうぶう文句言いながらも、追手門さんが乾かしてくれたシャツとパンツに心がほっこりする。そして朝まで飲み明かしながらアイドル論でぶつかりあったり、鉄骨を6人で運ぶ日々が愛しく思えてくる。
ふぉ~ゆ~にとって節目の一作となる『年中無休!』
毎回、毎回ふぉ~ゆ~の舞台を見て、いや今回の舞台はふぉ~ゆ~にとって節目の一作だといい続けているような気がします
2016年 縁~むかしなじみ~
2017年 GACHI
そして今年。2016年、2017年と舞台人として成長し続けているふぉ~ゆ~さんの三部作完結編、ふぉ~ゆ~さんの決定版ともいうべき一作になっています。
正直、ふぉ~ゆ~さんの舞台をウォッチし続けている身でありながら、ここまでの高みにふぉ~ゆ~さんが到達するとは思ってもみませんでした。
縁の時はさびれた町でかつての賑わいを取り戻すために祭りをしようとする男たちの物語。その男たちの会話の面白さは、絶妙な間合いからくるものでした。それはアドリブの面白さではなく、意図して作られ、稽古で磨かれてからこそ生まれる間合いなのです。名人と呼ばれる落語家さんからうまれる会話劇のようでした。
GACHIは踊りとそれぞれのやりたいことを詰め込んだエンターテイメントショーでした。 ふぉ~ゆ~さんのやりたいことはラブストリー、落語、殺陣、シュールなストーリーと多岐に及び、“俺たちのプレゾン”と銘打った通り、ジャニーさんが生み出した究極のエンターテイメントショーを踏襲するかのような極上のエンターテイメントショーに仕上がっていました。
そして、今年『年中無休!』は1990年代に演じられた劇団カクスコのお芝居をふぉ~ゆ~主演で上演になります。先に述べた通り、縁、GACHIで面白さ最高記録を更新し続けたふぉ~ゆ~が
またおもしろさ更新をしました。
もう知ってるんです。ふぉ~ゆ~がお芝居がうまいことは。充分すぎるほど面白いと知っているのです。それを承知の上で、予想点をふぉ~ゆ~さんは軽々と超えてしまっているのです。
あらすじで書いた通り、この物語はあるリサイクルショップの日常を描いています。そこには大問題が起きるわけでもなく(「岡林」のオチは社員であれば大問題だけど)過ぎていく日々のちょっとした出来事を描いているだけなのです。そこにあるオチも実にささやかなオチです。
一体これでなにが面白いのか?
といえば、やはり絶妙なやりとりの間です。会話劇、コントの多くはオチが一番重要です。オチにたどり着いてしまうと、二度目を見るのがつらくなることが多い中で、『年中無休!』はオチにたどり着くまでの会話の面白さを何度でも体験したくなってしまうのです。
消費されて終わってしまうものではなく、何度みても笑える不思議な魅力が今回の『年中無休!』の中にはありました。
なかでも
ナチュラル・ハイ
鉄骨
は何度見ても、抑えきれない体の中から湧き上がる謎の笑いが生まれます。笑いの正体がなんなのかはわからない。わからないけど何度見ても、オチがわかっても面白いのがこの二編。
ナチュラル・ハイはカラーボックスに(シンナー入り)ペンキを塗りながら、こっしーとザキさが話すだけ、鉄骨に至っては6人が鉄骨を運ぶだけのコントです。これ以上の説明がいらいほどシンプルな話なのに、これ以上のセリフも間合いもないという完成度の高さ。
この舞台を一緒にみた友達とこの会話の空気感、ラーメンズの空気感に似ているねと話していました。シンプルだけど間合いが面白くて消費されないコント。それをアイドルであるふぉ~ゆ~が見事に演じ切ったことに恐ろしささえ感じます(もはやこれは芸人の域なのです)
もはやふぉ~ゆ~のアテガキの物語
YouTubeにあがっているカクスコの『年中無休!』をみると、セリフは驚くほど当時の脚本をそのまま使っていることがわかります。しかし、今回のふぉ~ゆ~版の『年中無休!』はあくまでもふぉ~ゆ~にしかできないふぉ~ゆ~のお芝居に仕上がっています。
4人のキャラクターは本人のキャラクターに寄せていています。ふぉ~ゆ~は確立されたキャラクターを実に有効的に使っています。中でも、ザキさんの破壊力は健在。ここまで愛されるバカができるのはザキさんしかいません。(←ほめてるよ)
破壊王ザキさんがいて、それをなんとかしようとする3人のメンバーがいる。このバランスにブレがないのがふぉ~ゆ~。面白破壊王ザキさんへどうパスを回していくのかの手際の良さも回を重ねることに鮮やかになっています。
本日の独り言
- 演出は藤原丈一郎と大橋和也君が主演を務めた『リューン』のウォーリー木下さんでした。やはりこの方、アイドルの輝かせ方をよくご存じの演出家さんだと改めて実感。宇宙six主演舞台もお願いします(切実)
- カクスコ版になくて今回追加されたセリフの中で、アイドルがAV女優になってしまうことに対して意見をたたかわせるシーンがあるのですが、アイドルは変わっていくというふぉ~ゆ~らしいセリフに漢(おとこ)らしさを感じました。
- 今回は踊り少なめ。この次はプレゾンやってくれないかな(ボソッ)
年中無休作品データ
製作年 |
2018年 |
公演期間 |
THEATRE1010(東京都)2018/7/26(木)〜08/06(月) サンケイホールブリーゼ (大阪府) 2018/8/9(木) ~ 2018/8/12(日) 鎌倉芸術館 大ホール (神奈川県) 2018/8/17(金) 愛知県産業労働センター ウインクあいち (愛知県) 2018/8/24(金) ~ 2018/8/26(日) |
上演時間 |
約2時間15分 (休憩なし) |
作 |
中村育二(カクスコ) |
脚色 |
登米裕一 |
演出 |
ウォーリー木下 |
出演 |
保坂靖男:辰巳雄大 与田新吉:福田悠太 日置周平:越岡裕貴 辻誠:松崎祐介 高田五郎:大高洋夫 追手門善次郎:八十田勇一 |