ブロードウェイで一時代を築いた作詞家、作曲家とその功績を紹介するシリーズ『ブロード・ウェイショウケース』の第三弾はコール・ポーターの物語。リッチでエネルギッシュな遊び人にして、有名な作曲家のコール・ポーターを演じるのは屋良朝幸君。今回もネタバレ全開ですので、まだご覧になってらっしゃらない方はご注意ください。
『Red & Hot COLE』あらすじ
1916年25歳にして初のミュージカルを作曲したコール・ポーター(屋良朝幸)に突き付けられたのは酷評だった。それでも祖父の莫大な遺産を引き継いだ彼は社交界で人気者。社交界の女王として名高いエルザ・マックスウェル(吉沢梨絵)はポーターの才能にいち早く気づき、ポーターの曲を社交界に紹介し、ポーターに「乗り越えろ」と励ます。
外国人部隊としてパリに渡った(とされる)ポーターはパリで裕福な未亡人リンダ・トーマスと出会い結婚する。モンマルトルでブリックトップ(彩吹真央)の経営するクラブに夫婦で入りびたり、ジャズの時代を体に吸収しながら、創作活動を続けていく。裕福なポーターは世界中を旅して人生を楽しんで、そして飽きていく。
アメリカのショウビズはポーターの曲を望んでいた。ポーターはアメリカに戻りミュージカル制作を始める。彼の作品は高く評価され、ハリウッドに渡る。時代はポーターに追いついた。大きな成功を収めるポーターに悲しい事故が起こる。絶望とも呼べる状態の中、ポーターはNYに戻る。
リチャード・ロジャースやレナード・バーンスタインが人気を博しているブロードウェイにおいてポーターはもはや終わった人になっていた。そんな折、ベラ・スピワックは『キス・ミー・ケイト』の作曲をポーターに依頼する。
屋良くんのダンスと実力者たちの歌唱力の化学反応
ジャニーズのダンス番長といえば、なんといっても屋良くんです。近年はTHE YOUNG LOVE DISCOTHEQUEや、ミュージカルで表現力には定評のある屋良くんですが、もはや、爪痕を残す努力をするというよりは、実力が認められ、期待されるポジションになっています。そして今回も期待されている屋良くんのダンスの期待値を大きく超えてきています。
今回のキャストをみると宝塚や劇団四季などを中心に歌唱力の強さがこの舞台の魅力になっています。もちろんその曲を作っているのがこの物語の主人公であるコール・ポーターなわけです。いい曲といい歌い手、そしてそれをまとめるのが、われらが屋良くんです。いい曲に終わることなく、歌にグサッと心に刺さる表情をまとわせるのが屋良くんの踊り。それは時に楽しみであり、時に悲しみ、辛さであり、エロスをまとうこともあります。中盤あたりで、妻であるリンダとは心がすれ違いからパリで知り合った男性との時間が表現されます。この一連の屋良くんダンス表現が心に強く焼き付きます。クールでスタイリッシュにすれ違うリンダとポーターを表現するダンスから、パリの男性(矢田悠祐)君を見つめるときの熱くとろけるような濃密なダンス。この落差が屋良くんなのです。
屋良くんの歴史の一つになるだろうダンス
と、ここまで、歌唱力と屋良くんの踊りの化学反応について、書いてきましたが、今回、もう一つ、頭から離れない屋良くんのダンスがあります。それは落馬事故のシーン。鈴木壮馬さんの歌で両足を馬に砕かれるという痛ましい表現が出てきますが、この屋良くんの踊りが頭から離れません。足は砕かれているから本来ならば足の動きは停止するのですが、むしろ砕かれた足が体から足が奪われていく憤りと悲しみを体のどのパーツよりも激しく踊るのです。体の一部に感情を持たせ体本体が足の気持ちをコントロールすることができない。
だからこそ、この後、屋良くんはこの両足に名前をつける。一つの体の中に3人の感情が同居するような状態につながります。このダンス、屋良くんのキャリアの中でも後に語り継がれるにふさわしいダンスになっています。ぜひ、会場で屋良くんの歴史のワンシーンを観に行ってください。
本日の独り言
- ブリックトップを演じられる彩吹真央 さんが本当に男前。宝塚の方じゃないとこのハンサムな仕上がりは望めませんが、さすがです。
- ポーターが恋人の青年と恋人つなぎで手をつなぐところにキュンとします。相手が矢田君でこれまたキュンキュンします。
- つまりは妻は相棒で恋人はイケメンなポーター。この部分の描き型がソフト
作品データ
タイトル |
Broadway Showcase VOL. 3 ミュージカル「Red Hot and COLE」 |
製作年 |
2019年 |
東京公演 博品館劇場:2019年3月1日(金)~17日(日) 大阪公演 森ノ宮ピロティホール:2019年3月21日(木・祝) 静岡公演 富士市文化会館ロゼシアター 大ホール:2019年3月24日(日) 愛知公演 刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール:2019年3月27日(水) |
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上映時間 |
約2時間10分(途中休憩なし) |
翻訳演出 |
小林香 |
訳詞 |
高橋亜子 |
音楽監督 |
岩崎廉 |
振付 |
加賀谷一肇 |
出演 |
屋良朝幸 矢田悠祐 吉沢梨絵/彩乃かなみ 木内健人 真瀬はるか/彩吹真央 ・ 鈴木壮麻 |