NEWSコンからかなり時間が経ちました。本日はV6坂本君の舞台です。ソロ活動ではミュージカルのイメージが強い坂本君ですが、今回はストレートプレイ。舞台は第二次世界大戦に突入するアメリカ、朝から飲んだくれている金持ち。このもはや北大路欣也をキャスティングしてもおかしくない重厚な役に坂本君が挑みます。ネタバレが入りますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。
『君が人生の時』あらすじ
1939年10月。サンフランシスコの波止場のはずれのニック(丸山智己)の安酒場。アイリッシュ、ポーランド、アッシリア人、アフロアメリカン。ここには様々な人々が酒を飲みにくる。酒を飲みながら、自分の話をしている賑やかな酒場だ。
この酒場には、ジョー(坂本昌行)という名の不思議な男がいつも朝からシャンパンを飲んでいた。ジョーには行き倒れていたところを助けたトム(橋本淳)という弟分がいる。トムにもジョーがどんな人間なのかわかってない。素敵なスーツを着て、朝からシャンパンを飲んでいるのだが、どうやって生計を立てているのかわからない。ジョーのすることと言えばシャンパンを飲みながら、酒場にやってくる人々と会話を交わすことだけ。その合間にトムにおもちゃやお菓子を買って来いと指図するだけなのだ。
ジョーは人種、仕事が異なった様々な人と会話ができるこの酒場が好きだった。しかしそこには風紀を乱すということで娼婦を取り締まろうというブリック(下総源太朗)が嗅ぎまわっている。この場所を壊そうというこの男にジョーは嫌悪を抱いていた。
酒場の客(であり、娼婦として客を物色している)の一人がキティ・デュヴァル(野々すみ花)だ。昔はバーレスクの女優だったという語る彼女にジョーは夢をたずねると「幸せな家庭」と答える。トムはキティに恋をしていた。ジョーは二人の仲を取り持とうととする。トムに少しの金をやって、キティはトムに買われていった。
少しして、トムは困って酒場に戻ってきた。キティが泣いているのだという。ジョーは足をひきずりながら、キティのいる部屋にいって彼女の過去を聴いてやる。おろおろしているトムに気晴らしにドライブに行こうと提案するジョー。全て二人の生活を整えてやるジョーにトムは、ジョーがどうしてこんなに金を持っているのか、改めて疑問を投げかける。ジョーは持っているお金がどんな金なのかについて語りだす。
酒場を行きかう人々の会話からは戦争のにおいが漂い、心があれていくのを肌から感じる。ブリックは娼婦への取り締まりを強め、キティにも職務質問をしていく。ジョーはブリックへの憎しみを止めることができなかった。目の前にはトムに買いに行かせた銃もある。ジョーに衝動が走る。
俳優坂本昌行の厚み
先ほども序文で書きましたが、今回の坂本君の役というのが
時代は第二次世界大戦に突入するアメリカで、朝から飲んだくれている金持ち(しかも身なりがちゃんとしている)
この時点で、この人。。。
絶対なんかある人!
と思わざる得ないような設定なのです。イメージでいったらもう北大路欣也(日曜劇場とかに出てる時の)クラスのズシっとした重厚感が感じられるような、首領と書いてドンと呼びたくなるような人物です。
そして今回の坂本君は、登場の時からセリフを発することなくこの首領感が後光のように出ております。なんというか堅気じゃない凄みがでちゃってるんですよね(言ってしまえば○○ざ的な)。ブリキの人形のぜんまい巻きながら「やっちまうか」とかいうセリフが震えるほど似合うのです。この物語には説明をする狂言回しのような役はありません。セリフと佇まいで、人物を語っていきます。坂本君の佇まいは一目で人物そのものを語っています。説明がいらないのです。
坂本君がどの瞬間もとにかく絵になっているのです(箇条書きにしてみました)。
- シャンパンを自らシャンパングラスに注いで飲む姿
- トムに買ってこさせたおもちゃのあやつり人形を操る姿
- おなじく、ブリキのミニカーを走らせる姿
- 足を引きずりながら歩く姿
今回の坂本くんはどれもこれも凄みを背負いながら、弱さをうまく抱き合わせてキュンとさせてくれてしまうのです。
凄みと弱さの頂点はココ!
そして、その凄みと弱さの合わせ技の頂点にくるところが、酒場に来たメアリー・Lという女性と話をするところ。
坂本君はMLというイニシャルのついたバックを見て、女性の名前を当てようとします(ナンパだよねこれ)。女性の名前がメアリーだと聞いて、元カノ、メアリーとの思い出が語られます。付き合っている時に子供がいることを想像し、中でも3番目の子がお気にいりだったことを話す坂本君(この子存在してないからね!)。
「メアリーと結婚できなかった時、そいつの親になれなかったのが残念だったな」
(シャンパンを飲む)
えええ~めっちゃ乙女。
妄想癖もそこまでくると、病のレベルなのでは?と心配になりますが、凄みと、このポエミーが混ざるとグサッと心臓に突き刺さります。致命傷になりそう。
全編を通して、ちょいちょいみせる弱さがとにかく秀逸。凄みとあいまった弱さが癖になるのが今回の坂本君です。
実は去年の末くらいからなんとなくウィリアム・サローヤンが気になっていました
ふぉ~ゆ~舞台にちらっと出てきたサローヤン
12月にふぉ~ゆ~の『23階の笑い』がありまして
物語の中にウィリアム・サローヤンの名前が出てくるのです。(成功している作家として話題に上っているという扱い)サローヤンも『23階の笑い』の作家たち同様、移民の家の出であり、コメディを作っていた作家だからこそ出てきた名前なのでしょう。
そして今回の『君が人生の時』も移民が集まる酒場の物語。アメリカで生きていく移民を多角的に描いています。お金がなくてギリギリに生きる人たちがたくさんでてきますが、それをジョーがずっとみていて、お酒をおごったり、金銭的に助けてあげたりしています。
『23階の笑い』の少し前、11月26日 TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」の推薦図書特集でサローヤンの『僕の名はアラム』が推薦書として伊藤聡さんが紹介していました。『僕の名はアラム』は9歳の男とおとぼけなおじさんが出てきて面白い本です。その時に出ていた話として、サローヤンはアルメニア移民で相当につらい子供時代を送っていたので、こういうおじさんがいたらいいなという願望が含まれているのではないかという話を伊藤さんがされていました。
『君が人生の時』のお金がギリギリの生活者であふれていた酒場にこんな人がいたらいいなという願望があるのかもしれません。
ふぉ~ゆ~と坂本君がジャニーさんのテーマに寄り添っている
『君が人生の時』は戦前の物語、『23階の笑い』は戦後の物語ですが、どちらもアメリカで、息苦しい日々の中で、なんとか笑いながら生きようとする人々を描いています。同じ事務所のふぉ~ゆ~と坂本君が同じようなテーマに取り組んでいるというのは偶然だったらすごいけれど、ジャニーさんが描いている「平和」「自由」というテーマにつながっているように思えてなりません。
本日の独り言
- 導入部分を観ながらすごい既視感を覚えました。「あれ?これどっかでみたような。。。あっ『マリウス』みたい」そうこの物語も港町の話でした。
- そうなってくるとジョーの弟分で出てくるのって七五三掛龍也君なんじゃない?なんて思っていたら、橋本淳君がTravis Japanの中村海人君に似てるんですけど~
- だったらうみんちゅでよくない?てかしめちゃんでもよくない?(←しつこい)
作品データ
タイトル |
君が人生の時 |
製作年 |
2017年 |
公演期間 |
2017年6月13日~7月2日 (新国立劇場 中劇場) |
上演時間 |
約3時間(休憩20分含む) |
作 |
ウィリアム・サローヤン |
翻訳 |
浦辺千鶴 |
演出 |
宮田慶子 |
出演 |
ジョー ― 坂本昌行 キティ・デュヴァル ― 野々すみ花 ニック - 丸山智己 トム - 橋本 淳 キット・カーソン - 木場勝己 下総源太朗 沢田冬樹 中山祐一朗 石橋徹郎 枝元 萌 瀬戸さおり 渋谷はるか RON×Ⅱ かみむら周平 林田航平 野坂 弘 二木咲子 永澤 洋 寺内淳志 坂川慶成 永田 涼 澤山華凛 三浦涼音 一柳みる 篠塚 勝 原 金太郎 |